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●太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降りつむ・・・

南さんという人と、写真集を共同で作る計画があります。

この企画は元々南さんから持ち込んできたもので、南さんが文章を担当することになっています。
私には、南さんの思いを意識した撮影が要求されてきますが、この南さん、なかなか厳しいことをおっしゃいます。

太郎を眠らせ

三好達治の詩「雪」の一節に「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降りつむ。 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪降りつむ。」というのがありますが、これを写真で表現できないかとおっしゃいます。

南さんから「太郎を・・・」の話を初めて聞いたときには、文学の素養が全くない私は、馬の耳に念仏状態でした。

南さんは続けて言いました。
「雪景色の田んぼ。その奥に民家。屋根に雪。1軒では淋しい、3軒がちょうどいい、2軒でもまあまあ。人工的な光はない方がよい。その奥には山並み。そして空には満点の星が。。。」

思いつく限り言いたい放題の南さんに対して、実際に撮影する私は、それが実現可能かどうかという視点で考えることになります。

だいたい富山の散居村じゃあるまいし、白山山麓の手取川流域にこんな風な家の建て方をしているところはありません。

無理だと突っぱねればそれまでなのですが。

南さんの言う言葉の奥に潜むものを理解した上で、対象の切り捨てや画面外への想像を喚起するような構図を選ぶことで、何とかそれを表現できないものか。

そうすることで得られた、新しい発見や成果は、私一人では手に入れることができなかったものだと思います。

太郎を眠らせ2