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●奧三方岳の思い出2

奧三方岳の登山をはじめて計画したのは、もうかなり前になりますが、1993年の1月です。
目的はもちろん白山の撮影。白山からいつも大きく見える奧三方岳からは、白山がどんな風に見えるだろうか。

このくらいの雪なら序の口
このくらいの雪なら序の口

 
 
無雪季にも登ったことのない山に、いきなり厳冬期に登ろうとしたわけで、一般的には無謀な登山と言われそうですが、私はそうは思っていませんでした。
世の中には道の無い山の方がはるかに多く、私はそれまでに、そのような山を雪を利用してたくさん登っていました。
奧三方岳は標高も森林限界以下の2000mちょっとですから、たいした苦労はないだろうと思っていたのです。
ところがこの予想は大きくはずれました。


1993年の1月9日、ひどい寒波が来ているにもかかわらず、出かけて行きました。
雪がガンガン降る深夜のドライブで雪崩の恐怖を感じながらも、「雪が10m降ってもラッセルの深さが10mになることはない。」と訳のわからないことを考え、国道156号線を登山口の平瀬まで車で走りました。
注.今の国道156はちょっと雪が降ると(時には雪崩なんか絶対起こらないと思うような条件の時まで)すぐに通行止めになりますが、当時はおおらかでした。


ラッセルは腰から部分的に胸くらいで、これは予想通りでした。
ブナ帯を抜けるとルートは急な雪原を登るようになりました。
予想が大きくはずれたのは、このあたりからです。

この雪原は、所々にクレバスが開いて、それが昨夜からの降雪で隠されて非常に気を使いました。
やっと雪原を登り切ると、その先に待っていたのは10m級の雪庇とナイフリッジが連続する稜線でした。
天候は猛吹雪でホワイトアウト。

時間も遅くなっていたので、そこにテントを張ることにしました。
急な斜面にピッケルでテントが張れるスペースを作ったまでは、まだよかったのですが、ますます強くなる風のためテントを張ることができません。
下手をすると、テントを飛ばされるかポールを折るか。

遂に私はあきらめて、張りかけたテントを撤収してブナ帯まで下降し、やっとテントを張ることができました。
夜は強烈な風に近くのブナがテントの上に倒れてこないか心配でした。
やっと朝になり、雪の重さで内部の空間が半分くらいになったテントから這い出しました。
登る気が失せた私は逃げるように下山しました。